安倍晋三前首相(66)の後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、東京地検特捜部が、安倍氏から21日に任意で事情を聴いたことが、関係者への取材で明らかになった。首相経験者が特捜部の事情聴取を受けるのは極めて異例。安倍氏周辺は前夜祭の開催費を補塡(ほてん)したことを認めているが、安倍氏は「不正は知らなかった」と関与を否定した模様だ。
特捜部は週内にも安倍氏を不起訴とする一方、会計処理に関わった公設第1秘書らを政治資金規正法違反(不記載)で略式起訴する方向で上級庁と最終調整している。
前夜祭は、安倍氏の公設第1秘書が代表を務める「安倍晋三後援会」が2013年から、東京都内のホテルで開催してきた。関係者によると、安倍氏側がホテル側へ支払った開催費用は15〜19年の5年間で約2300万円。一方、会費の総額は約1400万円で、差額分を安倍氏側が補ってきたとされる。
後援会の19年までの5年間の政治資金収支報告書には、前夜祭に関する記載はなかった。特捜部は、前夜祭を主催した後援会の収支報告書に、会費収入と、補塡分を含めた支出の双方を記載する必要があったとみて調べている。
政治資金規正法は、不記載の処罰対象を政治団体の会計責任者やその補助者としている。実質的に会計処理を担当していた公設第1秘書らは不記載を認めているという。一方で、安倍氏は不記載には関与していなかったと説明しているとみられ、特捜部は聴取で、安倍氏自身の認識も確認した模様だ。
安倍氏はこれまでの国会答弁で「後援会としての収入、支出は一切なく、収支報告書への記載の必要はない」と説明していた。結果的に誤った答弁を重ねていたことになるが、安倍氏は4日、報道陣に「その段階で私が承知をしていた事実と思われる事柄については答弁をさせていただいている。果たして事実はどうだったかということについては、まさに捜査が行われている」と述べた。特捜部の捜査には「誠意をもって対応していく」としていた。【志村一也、二村祐士朗、国本愛】
毎日新聞
2020年12月22日 19時22分
https://mainichi.jp/articles/20201222/k00/00m/040/182000c