大韓民国には、政治と権力の力を借りて教勢を拡張しようとする大型教会中心のプロテスタント勢力と、宗教の力と影響力を借りて支持率を高め、選挙に勝とうとする政治勢力があった。
チョン・グァンフン牧師は、その間を仲栽し繋げば大きな利益と影響力が生じるという点を看破したものと見られる。
大韓民国の保守政治勢力は、1948年の政府樹立以後、長期間政権を担い、「北朝鮮の脅威」「アカ」「従北(北朝鮮に盲目的に従う)左派勢力のうごめき」などの赤狩りの「マッカーシズム」を伝家の宝刀のように振り回し、危機を脱してきた。
大型教会中心の保守プロテスタント勢力もやはり、「信仰を口実に金を稼ぐ」「教会を私有化し世襲する」という批判や教会内での性暴力疑惑などが明らかになるたびに、「従北左派の陰謀」「反キリスト教勢力の攻撃」などを前面に出し、危機を脱してきた。
二つの勢力の間に「共通の利益」と「共通の敵」があるのだ。そして、互いを必要とした。
保守プロテスタント勢力は、最近になり性的少数者(同性愛)、イスラム出身の外国人、差別禁止法の三つを攻撃目標に追加し、信者を扇動してきた。
宗教家への課税の廃止という現実的な利益は裏に隠した。それに合わせて「教会の道具」になると手を差し出した人が、当時の自由韓国党のファン・ギョアン代表だった。
ファン元代表は2019年3月20日に韓基総を訪問しチョン・グァンフン牧師に会った席で、
チョン氏が「総選挙で自由韓国党が200議席を取れば、この国を正しく立て直し、第2の建国ができる基盤がつくられる」という政治介入の発言をしたのに対し、満足な表情で聞いているだけだった。
以後、光化門で開かれた反政府集会の壇上にチョン・グァンフン牧師とファン・ギョアン元代表が共に上がって手を取り、互いを支持し応援する姿が、何度もメディアと放送で公開された。
保守キリスト教界の代表者として公式の地位と政治的影響力を渇望していたチョン・グァンフン牧師に翼が生えたのだ。
チョン・グァンフン牧師は2019年、大統領府前での集会で
「今、大韓民国は、文在寅は、すでに神が廃棄処分にしました…大韓民国は誰を中心に回っていくのか。
チョン・グァンフン牧師を中心に回るようになっている。よく思わなれなくても仕方がない。…私は神の玉座をしっかりつかんで生きている。
神よ、動くな。神よ、ふざけたらひどい目に合わせるぞ。私はこのように、神と親しいのだ。仲良しだ」という神性への冒涜発言まではばかることなく吐き出す状況に至った。
とうとう、全世界を荒しているCOVID-19への感染の脅威を防ごうとする当局の努力まであざ笑い、
「野外集会の現場ではCOVID-19に感染しない。…COVID-19にかかっても愛国だ。かかった病気も治る」などの妄言を続け、信者を惑わし、フェイクニュースを広めた。
「文在寅打倒」「民主党攻撃」という共通の目的に傾倒した保守政党は、チョン・グァンフン牧師や極右プロテスタント勢力との距離を広げようとする努力を全くしなかった。
コロナ禍に対する政府の防疫努力も蔑み、結果的にチョン・グァンフン牧師のでたらめ主張に力を加える役割を果たした。
あげくの果てに「2020年8月15日のCOVID-19集団感染および伝播事態」が発生したのだ。
1960〜70年代の朴正煕(パク・チョンヒ)政権下での政教癒着とプロテスタント教団の乱れの背景には、チェ・テミン牧師がいた。
日帝強占期に巡査だった彼は、解放後に仏教青年会の会長および僧侶になり、自ら仏教・キリスト教・天道教を総合した永世教という宗教を創始し、似非教主になる。
そうしているうちに、いつのまにかキリスト教の牧師を自任し、ラスプーチンに似た「神秘の治癒能力」を掲げ、
当時母親を失った悲しみに陥っていた朴正煕大統領の家族、特に次女の朴槿恵(パク・クネ)に近づき信頼を得る。
彼はその影響力を前面に出し、大韓救国宣教会を設立し、プロテスタント界を親政権派に改造する作業を行い、救国奉仕団、セマウム奉仕団などを設立し、総裁の地位に就き、各種の人事と利権に介入し、莫大な不正蓄財を行った。
30年ほど後、チェ・テミン牧師の娘のチェ・ソウォン(改名前はチェ・スンシル)氏は再び朴槿恵大統領の側近の役割を果たし、国政壟断を日常的に行い、保守政権の没落を加速化させる契機となる。
ラスプーチンとチェ・テミン牧師、チェ・スンシル氏が政権勢力の歓心を買った後、「陰の実力者」の役割を果たして国政を壟断したとすれば、
チョン・グァンフン牧師は野党権力と野合し、利益を追求し、社会不安と無秩序を助長しているといえる。
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/37553.html