4月にはヒナ1羽が孵化ふか。体重が増えずに、親の代わりに飼育スタッフが餌を与える人工育雛いくすうに切り替えていたが、順調に育ってきたことから、今月下旬には一般公開の展示スペースに戻す予定だ。
フンボルトペンギンは、チリなど南米の太平洋沿岸海域に生息。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「絶滅危惧2類」に指定されている。
同館にはペンギン専用の展示施設「ペンギン村」があり、約70羽のフンボルトを含む5種類約140羽を飼育。凍結精子を使った人工授精には2012年から取り組む。雌の体重変化や繁殖時期の行動を観察し、採取した精子の凍結や解凍方法などを研究してきた。
昨年4月にはフンボルトとしては世界で初めて人工授精に成功し、2羽を孵化させた。今年も昨年と同じ雄の「ゲンキ」から精子を採取し、凍結、解凍した後、2月25日に雌の「ハッピー」に人工授精を実施。3月に産んだ卵2個のうち一つが有精卵で、4月11日に1羽が誕生した。
人工育雛では、アジやシシャモ、イワシをすりつぶした離乳食や切り身などを与えている。77グラムだった孵化時の体重は今月12日現在、3・42キロにまで成長。性別はまだ分かっていない。
飼育スタッフの久志本鉄平さん(35)は「世界のペンギンの半数以上は絶滅危惧種。人工授精の技術が確立できれば、他のペンギンの繁殖にも応用できる可能性がある」と話す。同館はチリの国立公園とフンボルトの研究、保護に関する協力協定を結んでおり、人工授精に関する技術交流も検討するという。
日本動物園水族館協会(東京)の担当者は「ペンギンの人工授精は世界で数件しか成功例がない。遺伝的多様性の維持や種の保存にも役立つ」としている。(中村明博)
http://yomiuri.co.jp/science/20170713-OYT1T50043.html
